本日は2021年9月7日に発売された佐渡島庸平さんのベストセラーを紹介します。佐渡島さんは私も大好きな「ドラゴン桜」「宇宙兄弟」を編集者として担当されていた方です。
本著はビジネスシーンに限らない「本当に価値のあるものを見つけるための物事の見方」を教えてくれる1冊です。
観察力を鍛えれば他人とは違うアウトプットが出来る
【質問】そもそも何故、観察力を鍛える必要があるのか?
世界の見え方が変われば他人と違う発想が出来る様になるからです。
本書ではリンゴが木から落ちるのを見て引力の存在に気付いたニュートンの話が紹介されています。それが真実なのか逸話なのかは置いといて、重要なのはインプットが変わればアウトプットが変わるということです。
例えば飲み会に参加した結果、沢山の学びを得て仕事に活かす人もいれば、ただ楽しんで終わる人もいます。それは言い換えれば得た情報をどのように自分の脳に残していくのかには個人差があるということです。この差こそがアウトプットを変える要因です。
皆さんが「クリエイティブな生き方をしたい」「他人とは違う結果を出したい」「自分が生きた唯一無二の証を残したい」と考え、創造することに関心があるのなら、観察力を鍛えなければなりません。
他の人と同じように与えられた24時間の中で、他の人と同じものを見て、何を感じていくのかが大切です。もちろん、いろいろな体験をしていくことも重要です。でも観察力がなければ、どんなに新しい体験をしたとしても何も身につけることが出来ません。
観察力とは?
観察力とは、客観的に把握する技術と組織的に把握する技術の組み合わせです。観察力を阻むものは以下の3つです。(本書では「メガネ」と呼んでいます)
- 認知バイアス(=脳)→認知が変わることで世界の見え方が変わる
- 身体・感情(=感覚器官)→観察は感情によって変わる
- コンテクスト(=時空間)→人間の脳は、注意をある一点の固定化してしまうので、時間と空間を同時に注目することができない
「仮説」を起点に観察サイクルを回せ
仮説とは、頭の中のモヤモヤしたものです。仮説は言葉から始まります。仮説があると、答えを探すつもりで見ることになるので、主体的に見ることにつながり、観察が進みます。
良い観察が行われると、問いが生まれ、その問いから仮説が生まれます。そして、次の新しい観察が始まる。その繰り返しによって、対象の解像度が上がります。自分の解釈、感想を事実と思ってしまうと観察は止まります。「抽象→具体→抽象」の作業を繰り返すことで観察の質は上がります。
自分のバイアスに気づくための知識を得る
本書では、人間のバイアスについて詳しく書かれていました。「人間はこういうバイアスによって物事を短絡的に考えてしまう」「人間の脳はバグっている」「こういう心理バイアスが存在するから、人間は物事をきちんと観察出来ない」といった内容が紹介されています。例えばニュースを見ている時にも、人間は表面的な理解だけで全て分かった気になってしまいます=手っ取り早くラベリングしてしまいます。
それに気づくことが大切です。何かを判断したとき、「どういうバイアスによって自分はこの判断をしているのだろう?」と考えることが大切です。そのためには人間にはどういうバイアスがあるのか理解しておくべきであり、まずは知識を得ておくことが大事です。
- 確証バイアス
- ネガティビティバイアス
- 同調バイアス
- ハロー効果
- 生存者バイアス
- 根本的な帰属の誤り
- 後知恵バイアス・正常性バイアス
型を身に付けなければ次には進めない
本書では「創造とは真似から始まる」と記されています。そこではドラゴン桜の「カタがなくてお前に何ができるっていうんだ。素のままの自分からオリジナルが生み出せると思ったら大間違いだ!創造するってことは、まず真似ることから始まるんだ!」との台詞が引用されていました。
佐渡島さんはその例として、人が面白いと感じる物語の七つの型を紹介しています。私達が目にするマンガや映画は型が決まっていて、それ以外のパターンは存在しないんですよね。私たちは人生の中でたくさんの漫画や映画、小説に触れる機会があるでしょう。毎年どんどん新しい作品が生まれていきます。その全てが、必ずどれかの型に当てはまっているんです。では作品を他の作品と差別化するものは何なのでしょうか?
本書では、それは制作者の記憶、体験だと語られています。例えば映画なら、基本的な型は他の映画と同じでも、監督の記憶や体験によって他の作品とは全く違うものになっていくということです。さらに自分の記憶や体験は「体験した数×観察力」で決まります。
今からでも遅くはありません。①たくさんの体験をすること、②そしてひとつひとつの体験から何を学び取るのか、何を観察していくのかが大切です。何かを体験する時には、まずはルールに従って愚直に真似してみるべきなんですよね。型がなければ次には進めません。何事においても、真似をし続けることによって型が見えてくるものです。
学びには2つの段階がある
本書で「スキルを無意識にするための学びと、身につけているスキルを意識的に行うための遊び」の話がありました。バスケを例にしましょう。バスケのシュートフォームでは「膝は曲げて、右手の肘が外側に出ないように締めて、左手は添えるだけ」と指導されますよね。(スラムダンクの見過ぎ笑)
この言葉の通りに意識しながら練習していくと気づけば何も意識せずともシュートが打てるようになるんです。これがまさにスキルを無意識にするための学びです。実はそれは学びの第1段階で、次があります。それが、身に付けているスキルを意識的に行うための学びです。
先程のバスケの例でいえば、無意識にシュートを打てるようになったものの、なかなか入らず「もっとシュートの成功率を上げたい」と思う人は多いでしょう。そのときに「どうして膝を曲げて右肘を締め、左手を添えるんだろう?」と考えるんです。それまでは単なる型として学んでいたものに関して、もっと上の目線から俯瞰し、自分の今の取り組みを意識しながら学び直すことが必要になります。それが学びの第2段階です。
普段の仕事でもこの学びは活かせると思います。改めて「なぜこれが正攻法なんだろう?」「なぜ上司はこういう指示をしたんだろう?」「なぜこんなルールになっているんだろう」と考えてみてください。
「模倣、絶対」の世界へ行ける人が資本主義社会の覇者
最後に紹介するのは、曖昧さの四象限の話です。本書には、横軸を「絶対と曖昧」、縦軸を「想像と模倣」とした四象限が登場します。簡単に表現すると「人間が創造的な仕事をするまでには、どのようなステップを踏んでいくのか」を可視化したものです。
新しいことを始める時には、どんな人でも「曖昧、模倣」からスタートします。みんな、最初はどうすれば良いのか曖昧ですよね。最初は「こんな感じでいいのかな?」と曖昧な理解でスタートして、まずは模倣していくわけです。そこから先人の知恵をキャッチアップして身に付けていく中で、「これはこうすれば良いんだ」と確信できるようになっていきます。
みんなこのようにして「曖昧、模倣」の世界から「模倣、絶対」の世界に向かっていくんです。曖昧、模倣から模倣、絶対の世界に行ける人は、資本主義社会では非常に強い存在です。トヨタやユニクロは模倣、絶対の世界の覇者ですね。
面白い作品はコンセプトが明確
続いて、創造と絶対の世界です。スポーツの話でいうと、言われた通りにできるようになった人が、今度は自分で考え、創造力を発揮してプレーしていく。そこから価値は大幅に高まっていきます。ここでのポイントは、あくまでも絶対の領域にある点です。絶対とは説明できるということです。世の中で面白いと言われるのは「この作品はこんなコンセプトです。こう言うことを大事にしています」と説明できるものなんです。
「創造、曖昧」の世界になると、説明できません。アートの領域です。コンセプトがあるのかないのか曖昧です。伝説的な作品の多くは、アートの領域に片足を踏み入れています。クリストファー・ノーランの映画作品などが思い浮かびました。わかりそうでわからない要素、曖昧さが残っているからこと、多くの人があれこれ議論して話題になっていきます。
世界の曖昧さを受け入れよう
本書を読んで、改めて世界の曖昧さを受け入れることが大事だと思いました。「これはこうしたら良いんだよ」「これが正攻法だよ」と決めつけて、物事を測る定規を持った瞬間に、自分の学びは終わります。絶対的に「これが正しい」と言えることはありません。
まずは先人の知恵を学び、真似ることが必要ですが、やはり最後は自分自身で考えなければなりませんし、絶対的な正解はないんです。世界は複雑で曖昧です。
相手がどんな人かわからない、どうすれば今の仕事がうまくいくかわからない、わからないものはわからないまま置いておく。本書ではそのように戦略的に判断を保留することこそが観察力の鍛え方だと伝えたいと感じました。
如何だったでしょうか。気になった方は是非購入して読んでみてくださいね。
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