創業時を支えた二つの言葉
- 「長(ちょう)の一念」
- 「因果倶時(いんがぐじ)」
背景
ブラジルから帰国後、再びコーヒー卸会社で働いていたが、ある時、得意先を競合他社に取られた社員を往復ビンタで殴る社長の姿を見た瞬間、辞表を提出した。大変恩義はあるけれども、こういう状況のもとに会社は発展しない。厳しい中にも和気藹々とした理想の会社をつくろう。そう思ったのである。
ゆえに私が起業したのは、社長になりたいからでも、金儲けがしたいからでもない。ただ理想の会社を作りたい。その一念だけだった。
起業後 〜ドトールの由来〜
軍資金の三十万円も人から借金をし、八畳一間の場所で2人の仲間と共にコーヒー豆の輸入、卸の会社を立ち上げた。「ドトール」という社名は、ブラジル時代に住んでいた地名から取った。
お金も後ろ盾もない。コーヒーの品質も高くない。あるのは夢と情熱だけ。まさに徒手空拳でスタートしたため、最初は全く買ってもらえなかった。明日潰れてもおかしくないという恐怖心を静めようと、夜は自宅近くの神宮外苑を散歩してからいつも帰宅していた。
訪れた転機
そんなある時、ハッと気づいたことがある。潰れる、潰れると思うから心が萎縮し、思い切った仕事が出来ない。明日潰れてもいいじゃないか。今日一日、朝から晩まで体の続く限り働く。明日のことは考えない。今日一日に集中しよう。
毎日毎日こういう心構えで仕事を続けていると、私の真剣な姿を見て、「あぁこいつ大変だな。なんとかしてやろう」と手を差し伸べてくれる人が現れるようになった。
二つの言葉との出会い
二つの言葉との出会いもまた、私に大きな影響を与えてくれた。
創業当初、自分は死に物狂いで働いているのに、社員に必死さが感じられない。そのことに腹が立って仕方がなかった。ちょうどその時、ある人から「長(ちょう)の一念」「因果倶時(いんがぐじ)」という言葉を教わった。
日頃社員に不満を募らせていたけれども、その原因は社員にあるのではなく、すべては長である自分自身にある。自分自身が変わらない限り社員は変わらない。また、よかれあしかれ、過去の因の積み重ねが今日の結果を作っている。未来をよくしようと思えば一分一秒も疎かには過ごせない。
そう気づいてからは、社員への不満や批判は一切消え、より一層仕事に全精力を傾注するようになった。紹介が紹介を呼び、創業から二年ほどで事業を軌道に乗せることができた。
名言から学ぶ
- 他人を変えることは難しい。自分自身を見つめ直そう。
- 良い未来は今を頑張らなければ訪れない。今日からできることを一つずつやっていこう。
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