こんにちは。今日はわが子の心の健康を保つコミュニケーションの秘訣についてご紹介します。
子どもの成長は、身長や体重など身体的な変化だけではありません。心もしっかりと成長していきます。その変化や発達を観察し、健康状態を管理するのも保護者さまの役割ですよね。しかし、目に見える身体の不調や発達状況は管理しやすいものの、心の健康はどのように育み、守っていけばよいのでしょうか?
心の健康管理とは?子どものメンタルケアの重要性
身体だけでなく内面の状態も健やかに保つこと、それが心の健康管理です。心の健康の具体的な例として、情緒的健康、知的健康、社会的健康などが挙げられます。これらは、自分らしくいきいきと生きるために必要な要素だといわれています。
人の心は、強い不安や悩みなどストレスを抱えるような状態が続くと、つかれてしまいます。ストレスの感じ方は人それぞれですが、そこには幼少期の心理的状況が大きく左右しているといわれています。心の健康を保つには、子どものうちに心理的なケアをすることが重要です。
『三つ子の魂百まで』という言葉がありますが、これは小さな頃にどういった心理的な状況にあったかが一生を左右するほど重要だという意味だと考えています。ですので、子どものときから心が健康でいられるように、周りの大人は“I’m OK. You’re OK.(アイムオーケー、ユアオーケー)”の心でいられるようにサポートすることが重要です。
“I’m OK. You’re OK.”とは心理学的な用語で、自己と他者を肯定するコミュニケーション姿勢を指します。
“I’m OK”というのは、私は大切な存在だ、信頼される存在だ、愛される存在だという意識を持つこと。“You’re OK.”も同じで、あなた(あなたたち)に対しても、大切だ、信頼できる、みんなが愛されるべき存在だと思えるような状態に心を持っていくこと。それは普段の大人との関わり方から育まれていきます。自分に自信があるとか、自分が大好きだということではなく、根拠なく自分のことをなかなかいいなと思えていて、周りにもいい人はいっぱいいると漠然と思えることが非常に大切です。
心の健康を保つためのキーワードは、“I’m OK. You’re OK.”。この姿勢を育てるには、大人が子どもに対してどう接しているかが重要です。特に、幼児〜小学生くらいまでの子どもは、家族のほかにも関わる人が増えたり、小学生になると保護者から自立し始めたりと、身の回りにさまざまな変化が訪れます。その環境の変化に伴い心の変化も起こりやすいため、メンタルケアにとって大きなポイントとなる時期です。
乳児から幼児の間は、大人がいないと本当に生きていけない状態です。小学校に入学するまでは、家では保護者、保育園や幼稚園では先生がいつでも目の届くところにいるという環境で育ちます。そういうときにしっかりと子どもが心のケアをしてもらえているか、つまり自分に愛情をもって接してもらえているかが重要です!
心のケアとして大切なのは、日頃から保護者が愛情をもって子どもに接することです。何か特別なことをすることではありません。愛情を受けた体験が十分でないと、最初に述べたような“ストレスを感じやすい心”が育ち、子どもの生活にもリスクが起こる可能性がでてきます。
小学生になると、以前よりも保護者と離れる時間が長くなります。また、学校の先生は、幼稚園や保育園のように四六時中子どもを見ているわけではありません。すると子どもには、自分で判断して動くという大きな変化が現れます。しっかり愛情を向けられてきた子どもは、比較的スムーズに独り立ちに向かうのですが、自分への愛や承認が足りていないと感じている子どもの場合は、その気持ちが満たされないと次に進めないことががあります。これが、親離れできない一つの要因です。低学年頃の登校しぶりや不登校は、もちろん子どもそれぞれの要因がありますが、保護者と離れるのが怖い、いわゆる分離不安が原因となることが多いです。
周りの大人がどんな接し方をし、どんな感情を与えてきたかが、子どもの心の健康を保つ重要なポイントになります。日頃から子どもに対する接し方やコミュニケーションを工夫する意識を持つようにしましょう。
心の健康を保ち育てるコミュニケーションのポイント
子どもの心を健康に育むには、大人からの接し方が重要だということがわかりました。では、どんなところに気をつけて子どもとのコミュニケーションを行なえばいいのか、4つのポイントを紹介します。
ポイント①子どもの話を聞くときは必ず目を見て
まずは、一日の中で短い時間でもいいので、しっかりと子どもの目を見て話をしてください。子どもにとっては、放っておかれている、自分に関心を向けられていない、愛をもらえていないと感じる状況はよくありません。お風呂や夕食の時間でもいいので、話すときは“ながら”ではなく目を見て話を聞く。当たり前のことですが、意識して行動ができているか、保護者自身でチェックしてみてください。忙しい中でも、『私は今あなたのことに関心を持っていますよ』と子どもに伝えることが肝心です
その日あったことや考えていることなど、子どもの話を聞くことは心の状態を把握することにもつながります。しっかりと目を見て、関心を向けていることを伝えることを意識し、コミュニケーションの時間は必ず取るようにしましょう。
ポイント②悩みを打ち明けてきたら、まず気持ちを聞く
例えばお子さまが、“友だちに傷つけられた”と話したとします。つい保護者は介入して解決しようと思いがちですが、気持ちをおさえてお子さまの話を聞きましょう。『どうしたの?』『大丈夫?今、どんな気持ち?』と、今の状況や思いを引き出します。このときに気をつけたいのが、『お菓子あげるから元気出して』などとごまかさないこと。子どもの気持ちを聞いたうえで、保護者自身もその問題に向き合う姿勢を示すことが大切です。
悲しいことがあっても、保護者や家族が話を聞いてくれると思えるだけで、子どもは安心できます。悩みに対して解決を急いだり、他のことでごまかしたりするのではなく、子どもの気持ちに寄り添って一緒に考えてあげられるようなコミュニケーションを心がけましょう。
ポイント③保護者の価値観でアドバイスをしない
「子どもに悲しいことや傷つけられるようなことがあると、『こうすればいいんじゃない?』などと、アドバイスをしたくなりますが、そこはぐっとこらえて。なぜなら、実は子どもは自分の保護者であっても、すべて本当のことを言えているわけではないことがあるのです。特に、ちょっと自分にも原因があるなと思っていることは、なかなか言えないことも。そのようなときに、断片的な情報でアドバイスをしたり、一方的に友だちのことを悪く言うのはよくありません。また、子どもと保護者では考えが違うことも大いにあります。保護者基準の“こうするべき”ではなく、まずは子どもが“どうしたいか”を聞き出しましょう。意外に、話を聞くだけで解決することもありますよ
また、子どもの問題に保護者が余計な干渉することが、心の成長を妨げてしまうことにもなりかねないのだとか。
大人が介入すると、『あなた一人で解決できないでしょ』や『あなたのやり方よりお母さんの方が上手でしょ』というメッセージを子どもに伝えることになります。逆に、介入しないことは、潜在的に『あなたならきっとなんとかできるよね』というメッセージになります。傷ついた後に、なんとか自分を立て直す訓練も必要ですよね。思いがけず人を傷つけてしまったのなら、これは言ってはいけないんだ、と自分で学ぶこともできます。小さな問題を対処した積み重ねが、自己肯定感を育みます。大人がその機会を奪わないようにしましょう
介入しないことは、決して放っておくということではありません。問題が起きたときには必ず話を聞き、子どもが求めるときには、助言をすることも必要です。また、大きなケガや命の危険につながるような場合は、即座に介入できるよう注意深く見守ることは忘れてはいけません。
ポイント④“I’m OK. You’re OK.”の気持ちで子どもを信頼する
すぐに保護者が解決しようとしたり、アドバイスをしたりするのではなく、子どもを信じて接するのが大切だということがわかりました。では、どんな姿勢で子どもを信頼するとよいのでしょうか?キーワードは、“I’m OK. You’re OK.”の心です。つまり、自分も相手も大切にする、尊重すること。保護者が子どもの考えややり方を信じることで、子どもも自分の力を信じることができます。また、トラブルに対して子ども自身が解決の経験をすることで、自己肯定感へとつながります。
子ども同士のほとんどのトラブルは見守っていて大丈夫だと思っています。ポイントになるのは、子どもと保護者がお互いに“I’m OK. You’re OK.”の心が持てるかどうか。 少しずつでも“I’m OK. You’re OK.”の姿勢が身についている子どもは、自分の中にそこはかとない自己肯定感があります。多少のことを言われてもくじけず、傷ついたり引きずったりもしないで済む。同時に保護者も、多少のことは自分でなんとかするだろうという気持ちで子どもを信じ、遠くから見守る姿勢が大事です。子どもですから、時には乱暴な口調で友だちと言い合ったりすることもあります。それも社会に出ていくための一つの試練だと捉えて、転ばぬ先の杖にならないように。人生の中では傷つくこともあるので、それがあってはならないと思ってしまうことの方が危険です。軽いケガならいったん転んでみよう、くらいのおおらかさを持ちましょう
小学生になると集団生活であることもあり、「友だちにいじめられてないかな?」「うちの子大丈夫かな?」という不安も感じやすくなりますね。しかしそんなときこそ、「あなたなら大丈夫」という気持ちを強く持ち、大げさに反応したり、余計に干渉しすぎたりしないように。“I’m OK. You’re OK.”の心で見守りましょう。
子どもが話しやすい環境で心の健康を把握しよう
子どもの心の状態を把握する一番の近道、それは子どもが日常的に保護者に話をしてくれることです。家庭内での話しやすい環境づくりを心がけましょう。
保護者が子どもにとっての心の拠り所であるために、考えていることや悩みを普通に話せる環境づくりが大切です。まず前提として、『いつもあなたの話を聞くよ』という姿勢を見せること。また、自分に興味を持っているんだと子どもが感じられる関係性を目指しましょう
子どもが話したいときに、いつでも保護者が聞ける環境が理想ではありますが、なかなか難しいのが現実です。限られた時間を有効に使うために、家族が集まる食卓ではテレビを見ずに話をするなど、ルールを設けるのもいいかもしれません。やり方にこだわりすぎず、ご家庭に合わせた方法を見つけましょう。
忙しくて子どもをかまえないときは?
どうしても子どもの対応ができないときは、『今、手が離せないからちょっと待っててね』と正直に伝えていいと思います。ただし、その約束は必ず守って『さっきの話は何?』と話しかけてください。小さな約束であっても守られないことが続くと、子どもはモヤモヤとした感情に慣れてしまい、やると言ったのにやらないというクセが子ども自身についてしまうので、気をつけなければいけません
もし、子どもがなかなか自分から話しかけてこないときには、保護者からの声かけも必要です。おとなしくしているからと安心するのではなく、「元気がなさそう」「様子がおかしい」と思ったら、必ず声をかけましょう。
子どもから話しかけてこないときは?
子どものコンディションは『ただいま』のひと声にも表れます。そのサインを見逃さないようにして、元気がなさそうだと思ったら『何かあった?』『なんでも聞くよ』と声をかければ十分だと思います。逆に、子どもの悩みに対して普段から過剰な心配をしたり、大げさに騒いだりしていると、『心配させたくない』『大事(おおごと)にされたくない』という気持ちから、かえって子どもが話しにくい状況をつくってしまうことがあります
子どもが話しやすい環境にあるかどうかには、“I’m OK. You’re OK.”の心構えができているかが大きく影響します。ここで気をつけたいのが、子どもに自己肯定感を持たせようとして、「あなたはすごい」や「あなたはえらい」といった表現をしてしまうこと。「すごい・すごくない」のように、裏の意味が存在する二元的な表現はできれば避けた方がいいです。
心理学的には、ほめることより勇気づけることを大事にしようという考えがあります。ほめるときにはまず基準があり、それに対して『できた・できない』の判断をしがちです。こういった“結果”に目を向ける姿勢は、子どもにも伝染して失敗を恐れるようになったり、自信をなくしたりする要因につながることがあります。また、前提となる基準も保護者目線であることが多いので、子どもにとって納得できる評価なのか、疑問が残ります。ほめるというのは、実は難しいことなんです。例えば、弟の世話をしたお姉ちゃんに対しては、『お姉ちゃんらしくて、えらいね』ではなく、『こぼしちゃったのを拭いてくれてありがとう。上手に拭けたの見てたよ』など、子どもの行動やプロセスに対して声をかけるようにします。『いいお姉ちゃん』という表現を聞くと、『悪いお姉ちゃんもいる』という考えが生まれるので、二元的な言い方もなるべく避けた方がいいです。自己肯定感ややる気に結びつけるには、結果ではなく経過(プロセス)を肯定するよう心がけましょう!
結果ではなくプロセスをほめて自己肯定感を育もう
行動やプロセスに対して声をかけることは、子どもが自分で考え、判断し、行動した事実を讃えることになります。結果はどうあれ、前向きな努力の積み重ねを認められたことで、子どもは自分のしている行動への自覚と自信が芽生え、自己肯定感が育まれます。
対して、結果だけに目を向けてほめるばかりでは、子どもは「いい結果を出さなければ、ほめてもらえない」と思うようになります。
成功や失敗に関わらず、等身大の子どもの姿を観察して勇気づけ、子どもが保護者に何でも話しやすい環境をつくっていくことが大切です。
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